保全作業 皿倉・国見岩コース

🌲森を守る日

12月6日土曜日。
山に冬の気配が満ちていました。
ケーブル山麓駅の気温は8℃。
皿倉平へ近づくほど、空気は鋭さを増し、静けさが深くなっていきます。

ヤマボウシ小屋に、11人の保全部員が集まりました。今日の目的はひとつ——皿倉・国見岩コースの登山道を、より安全に、より歩きやすくすること。

リーダーが道具の確認をします。

松葉箒、竹箒、唐鍬、ハンマー、スコップ、刈込鋏、そして防腐剤。
道具のひとつひとつに、これまで守ってきた山の時間が宿っています。

作業は二手に分かれて始まりました。国見岩コースを下っていくチームと、河内貯水池分れから登ってくるチーム。
冷たい風の中、声を掛け合いながら山へ向かって歩き出します。

落ち葉を掃く音、唐鍬が土を掘り起こす音、
そして防腐剤の匂い。
それらはやがて、静かな森の中にリズムを刻みました。同じ作業を、ただひたむきに、何度も、何度も。

そこへ通りかかった登山者が言いました。
「いつもありがとうございます。」
短い言葉でした。
けれどその一言が、部員の冷たくなっていた指先や心を、ふっと温めてくれました。
この山を愛してくれる人がいる——その想いが、作業を支えていたのです。

昼食はあっという間でした。
次の作業箇所を確認しながら、慌ただしく食べるパンやスープ。けれど、それはどこか特別な時間です。仲間と同じ空気を吸い、同じ山を見つめているという実感がありました。

午後の国見岩直登コースは、段差の高い階段が続きます。登山者が少しでも楽に登れるように、
石を選び、置き、叩き、馴染ませていく——
ひとつの石に、誰かの未来の一歩が重なっていくようでした。

午後1時、二つのチームが合流しました。
作業は終わりを迎え、静かな充足感が胸に広がります。

山は、今日も変わらずそこにあります。
けれど確かに、ほんの少しだけ良くなりました。
それは、誰にも気づかれない小さな変化かもしれません。けれど、その小さな積み重ねこそが、山を守るということ。


この日集まった11人の想いが、きっとこれから先の季節へも受け継がれていきます。(T.Y)