雨と刃と、静かな一日

朝から空は重く、灰色の帳が山を覆っていた。天気予報は数日前から、正確に雨を告げていた。

保全作業の日。だが、私たちはすでに知っていた。今回は、山には入れない。代わりに小屋での内業——鎌研ぎに切り替える旨は、前もって連絡していた。

午前九時。ヤマボウシ小屋に、部員九名が集まった。
誰もが雨を恨めしく思っていたが、口には出さない。ただ、どこかしら落ち着かない表情が互いに読み取れた。

砥石を水に浸す。沈黙の中、湿った石の感触が手に伝わる。
気が乗らぬまま刃を当てると、金属が石に擦れる音が、小屋の静けさを裂いた。

それでも、不思議なものである。
砥いでいくうちに、刃の曇りが落ち、少しずつ心も澄んでくる。
無言のまま作業に没頭すること約一時間。27本の鎌が、見違えるほど光を取り戻していた。

外の雨は止まない。
けれども、その刃の輝きに、私たちは少し救われたのかもしれない。

昼食も、言葉少なに黙々と摂った。
湿り気を含んだ空気が、小屋の中にも静かに流れていた。

作業は終わり、各々が静かに解散していった。
背を向けた山の稜線は、霧に沈んだままだった。

——雨の日には、刃を研ぐ。それもまた、山の仕事である。

山開き皿倉山で山開きが行われました!

本日、皿倉山ビジターセンターにて、帆柱自然公園愛護会主催による山開きが行われました。

この行事は、一年の始まりにあたり、登山者の皆さんの安全と健康を祈願することを目的としています。
晴れ渡る空のもと、朝10時30分から儀式が始まりました。お神輿のかけ声に合わせ、参加者全員が頭を下げ、一年の無事を祈りました。

式の最後には、愛護会理事長から、会員や来場された登山者の皆さまへ向けて、温かいメッセージが贈られました。
今回は40名以上の方々が参加され、盛況のうちに式を終えることができました。

少し冷たい風が吹く場面もありましたが、空一面に広がる青空がとても気持ちよく、清々しい朝となりました。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

春風とともに帆柱山へ(健康登山)

4月2日、澄み渡る青空のもと、満開の桜が優雅に揺れるケーブル山麓駅に29名の参加者と16名のスタッフが集まった。春の訪れを感じながら、一行は帆柱稲荷神社へ向かう。そこへ続く石段はなかなかに険しいが、新緑と色とりどりの花々に励まされながら足を進める。

帆柱神社登山口から登山道へと入ると、真紅のツバキが道端に散り、鮮やかなコントラストを描いていた。国見岩ルートに合流すると、ヤマザクラやオオシマザクラ、コブシの花があちこちに咲き誇り、まるで歓迎してくれているかのようだった。

洞見平では満開のアセビが目を引き、参加者は思わずカメラを手に取り、シャッターを切る。その後、河内貯水池別れにさしかかると、鮮やかな黄色のレンギョウが道行く人々の目を楽しませた。

イチイガシ(北九州の木)の森を抜けると、そこには白寿の桜が静かに佇んでいた。今年はまだ蕾のままであったが、その存在感は健在だった。さらに進み、さくら広場へ到着すると、満開の枝垂れ桜が風に揺れながら、私たちを優しく迎えてくれた。

一行はフユザクラ広場を抜け、国見岩から皿倉山頂へと登る。山頂では、小倉市街地や関門海峡を一望できる絶景が広がり、その美しい景観を背景に集合写真を撮影。春の光に包まれながら、皆の笑顔が輝いていた。

午後の行程では、権現周回路を巡った。大島桜はまだ固い蕾のままで、その開花には少し時間が必要なようだったが、それもまた自然のリズム。今回の登山では、多くの春の風景を満喫することができ、一行は満ち足りた気持ちでケーブル山麓駅へと下山した。

美しい山並みと花々、そして仲間たちとの心温まる時間。再びこの場所で再会する日を約束しながら、それぞれの帰路についた。

蝋梅の香りに和む登山道 健康登山

本日の健康登山は、煌彩の森から皿倉平へ登り、そこから権現周回路を西回りで半周し、九州自然歩道を経て市瀬峠、田床峠へと進む健脚コース。中河内林道を経由し白木谷に出て、解散地の小嶺台バス停までの道のりは12kmを超える。

天候には恵まれたものの、寒気の影響で皿倉平では気温マイナス2℃と厳しい寒さ。昼食地の八又の桜周辺では寒風が吹きつけ、震えながらの昼食となった。白木谷に入ると風はやみ、参加者38名、スタッフ13名は元気を取り戻し、期待を膨らませながら枝垂れ梅に向かった。しかし、今年の梅は続いた寒波の影響で、まだ固い蕾のまま。それでも、蝋梅の黄色い花びらと甘い香り、そしてマンサクの花が一行の心を温めてくれた。

花のない白木谷梅林ではあったが、ここで全員笑顔の集合写真を撮影。最後は、畑貯水池の湖面に輝く水の煌めきに励まされながら、51名の大登山隊は落伍者なく、無事に小嶺台バス停まで完歩した。